書評 桜木紫乃「ふたりぐらし」

雪景色、寒い冬の情景が似合って、

人間の表面だけでなく、

特に哀しみを描くのが上手い作家。

桜木紫乃

ふたりぐらし

マルっと、あらすじ

短編が10章で構成されている。

普通の短編集なのかと思いきや、実は1つの物語なのだ。

1章ごとに、夫の目線、妻の目線でリレー形式。

映写技師で、夢はあるが収入が少ない夫。

でも、優しく、穏やか。

看護師をしているという、控えめな、30代の妻。

俳優を選ぶなら誰だろう。そんな想像も楽しい。

「ふたりぐらし」の魅力とは

物語に大きな事件は、それほどないのに、

なぜか、この夫婦の行方が気になる。

作者の筆の上手さ

日々の、誰にでもある小さな事を、

作者はサクサクと先のするどいスコップで、

細く深く掘ってみせる。

穏やかで地味めな登場人物たちは、

小さな出来事を、自らの心の奥深くで、

しくしくと考える。ただ、ひたすらに。

チラチラと降る雪や、コップ底の水たまりに投影し、

ゆっくり、じんわり考える。

そんな小さな、日々のかけらは、

誰しも、知ってるのに簡単に言葉に出来ない。

そんな当たり前を、

言葉綴るという、美しさを感じる。

これこそが、本作の魅力。

80代になっても、またこの相手と結婚したい。

と言わしめる、

キトク素敵なお方がいるが、

登場人物もさり気なく、このチームに入る。

あからさまじゃなく、さり気なく、

というあたりを、うまーく描いている。

「こおろぎ」という第1話。

読み終えたら、

しみじみしみじみ、沁みるから是非。

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